日本経済新聞2014年7月30日付「春秋」欄でまちかど写真館が紹介される

以下掲載記事から

歌手の小椋佳さんがつくった「野ざらしの駐車場」は、ファンによれば隠れた名曲の一つだそうだ。久々に帰郷したら、豊かな自然が砂ぼこり舞う駐車場に変わっていた。季節感を失った故郷の風景。「これも仕方のないことでしょうか」。静かな怒りを詞につづった。

▼故郷を離れた都会人の感傷と言えばそれまでだ。しかし、開発で消えた風景を惜しむ気持ちは多くの人の心にある。ならば、せめて昔の写真を持ち寄り、思い出を共有しよう。そんな動きがさまざまな形で始まっている。ネットを使った「ヒストリーピン」という試みもその一つだ。英国で始まり、日本にも最近上陸した。

▼北海道から九州まで、ネットの日本地図に赤いピンが点在する。クリックすると、その場所の古い写真を見つつ投稿者の思い出を読める。静岡県富士宮市ではこのアイデアを応用し、高校生の手を借りて、街の古い写真をコメント付きで掲示するイベントを開いた。会場では高齢者と若者たちが、街を巡り会話を弾ませた。

東京都日野市では街の各所に、市民が撮った昭和30年代の風景写真などを約130枚、パネル展示している。お年寄りと帰省した子が一緒に懐かしく眺めているという。誰もが話していて楽しいのが自分の昔話だ。写真は格好の手がかりになる。もうすぐ8月。夏休みは古いアルバムを前に、家族で昔話を交わすのもいい。

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